待機児童は全国的に都市部で顕著にみられる傾向です。生まれ故郷を離れて暮らす都市生活者にとって、親の支援を受けずに子育てをすることは大きなハンディ以外の何物でもありません。共働き世代がともにフルタイムで働けない主たる理由は、まさにここにあります。
今年に入って急速に脚光を浴びているのが、家族・親族以外の第三者にスポットで託児を外注できるサービス。
たとえば、同じ保育園や幼稚園に通っているこども同士、親同士がともに仲が良く、残業で迎えに行く時間に間に合わないときなどに「ほんの数時間、お宅で預かってもらえませんか?」とピンチヒッターをお願いすることは可能でしょうし、実際によくある話。でも、本当に気心知れた間柄でなければ、気を使わないわけにはいきませんし、頻繁にお願いごとが発生する場合は気後れしてしまうでしょう。第一そのような地理的、心理的に好都合な友だちが同じ園で見つかる確率も高くはありません。そして、もちろん彼女(彼)は保育に関してはプロではなく素人に過ぎない事実も受け入れる必要があります。ケガや事故など、いざという事態が起こった時に、気まずい思いをすることも想定しなければならないでしょう。
そこで、このような託児ニーズと、保育士や保育経験者らを中心にしたプロ意識の高い人によるサービスとをITのマッチング技術で埋め合わせようとする流れが台頭してきたわけです。
グリーの子会社であるスマートシッターは同名の託児サービスを今夏より開始。
マッチングから実際の依頼にはじまり、予約管理、そして事後的な利用料の請求・支払いなどを一括して効率化、代行してくれるもの。東京海上日動火災保険によるスマートシッターの特別保険が付帯しているのも特徴。現在は東京都23区に神奈川県、埼玉県、千葉県の一部で実施されています。保育の提供者は本人確認を経て面談、研修が義務付けられるなど厳選採用を徹底。同社は昨今、増え続けている「潜在保育士」の存在に着目、この事業に参加してもらうことによりユーザーの安心感を獲得することを狙いとしています。低賃金や重労働、親の過度な要求や職場の人間関係などによるストレスあるいは自身の妊娠・出産などから退職し、一線から退いている、あるいは資格だけ取得してそもそも就職していない保育の有資格者は相当数に上り、一節には約60万人とも言われています。
一方、ジャパンベンチャーアワード2014を受賞し、全国で勢いよくユーザーと保育者その両方を増やし続けているのがアズママが展開する子育てシェアです。
同社の場合、保育者を「顔見知り」というキーワードで表現。独自に開発したSNSを通じて、困ったときに送迎や託児を頼める人を探すシステムです。保育を提供する方のすそ野を広げるべく、積極的に地域交流イベントや託児交流会を開催することで、精力的に参加者を増やしています。
利用にあたっては、公開範囲を任意で設定できるプロフィールを見て事前にある程度「友達」を作っておくことが必要。顔写真や住所、保育経験の有無など詳細を確認して依頼する仕組みです。もし、該当する支援者が探せない場合には地域の世話役と称される「ママサポーター」がバックアップしてその穴を埋めてくれます。
どちらも、ソーシャルグラフやレコメンデーションといったデータや機能が第三者にこどもを預ける際の心理的な不安を解消してくれるのが最大のポイント。ネットワーク外部性が鍵となるビジネスモデルなので、とにかくユーザーの拡大が急務ですが、「他人」以上「友達」未満、そんなゆるやかなつながりが今後、子育て世代に浸透していく気配が感じられます。