“おめでた”の女性は“錆びたナイフ”なのか!?

妊娠を理由にした降格は法律違反であると、はじめて最高裁が判断しました。

広島市の理学療法士の女性が、妊娠が発覚したため身体的に軽い業務部署への異動を希望したところ、異動後に管理職の「副主任」から降格させられたことは男女雇用機会均等法に違反するとして病院を訴えた事件で、一審、二審の判断が覆される画期的な判断が示されたことになります。

10月23日に判決が言い渡され、翌日にはNHKが時論公論で詳しくこれを報道、解説。

最高裁は「女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として均等法9条3項の禁止する取扱いにあたる」とし、高裁に対して審理を差し戻したものです。

この決定を受けて、マタニティーハラスメントに関する情報や被害体験の共有などを行っている団体マタハラNetが声明を発表。「マタハラに悩む多くの女性、そしてこれから社会に出て働こうとする労働者にとって大きな希望となるものです」とこの判決をたたえました。

また、マタハラの背景にあるものとして男女間を分断する意識の大きな差があることも指摘。

長時間労働・残業が当たり前という労働文化や、社会に根強く残る「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業意識が存在します。こういった日本社会の労働者像、労働意識が変わらなければ、マタハラが無くなることはなく、少子化問題が解消されることもありません。今日の最高裁判決をきっかけに、マタハラは違法であり許されないという認識が広く社会に広まり、ひいては、女性のみならず男性も含めすべての労働者が妊娠、出産、育児、介護といった家庭的責任を担いつつ安心して幸せに働くことのできる新しい時代が到来することを確信しています(マタハラNet代表小酒部さやか氏)。

日本外国特派員協会での記者会見の模様(ノーカット版)はこちら

マタハラ

活字にすることを憚れるような酷いマタハラを自身も経験している小酒部さんは、マタハラで悩んでいる女性へのアドバイスとして「録音する」「書面でやりとりする」ことを挙げエビデンスを残すことの重要性を説いています。

上司や人事とのやりとりは録音してください。出来れば、妊娠を報告に行くその時点から録音をしてください。また、会社から何か言われた場合(退職勧奨、降格、解雇)は、書面でくださいとお願いしてください。妊娠を理由とする解雇、降格などの不利益な扱いは法律で禁止されています。ですので、会社は妊娠が理由ではないと別の理由を付けて来ます。その際、「いや、真実は違うんだ!」と証明する立証責任は労働者側にあるんです。

内容が極めてデリケートなテーマゆえ、泣き寝入りせざるを得ないケースが後を絶たない上に、このように表面化する事案は氷山の一角にすぎません。

昨今、深刻な社会問題となっているマタハラですが、その定義は『働く女性とマタニティ・ハラスメント』によると、「妊娠を告げたこと、あるいは妊婦であることによって、上司、同僚、職場、会社から何らかのプレッシャーを受けること」とされています。つまり、主としてオフィスで繰り広げられるもの。この本が出版された2009年当時はまだこの問題が広く世間に認知されておらず、どちらかと言えばパワーハラスメントの傍流のような印象がありました。

しかし、マタハラは最近、電車やバスなどの交通機関で心ない仕打ちを受けたという報告が相次ぐなど、街にも飛び火しています。そして、そのきっかけが本来、妊婦をいたわるように意図されたはずのマタニティマークであるという指摘もあるのは皮肉な話です。

 

「女は妊娠したら錆びたナイフ、使い物にならない」

マタハラNetに寄せらたトラブルでは、そう社長が豪語し、妊娠すると必ずみんな辞める会社も報告されています。

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