「子育て」×「仕事」=HAPPY×2
社会に出て働くこと、こどもとしっかり向き合うこと。この二つが幸せを倍増させることを社是として謳う株式会社Lifull FaM。物件NO.1の不動産・住宅情報サイトHOME’Sを展開するネクストの100%子会社である同社がリリースしたコミュニケーションアプリLifull FaMが子育て世代のユーザーに好評を得ています。
誕生のきっかけは、プロジェクトを立ち上げた同社代表秋庭氏にとっての意外なエピソードにありました…。
株式会社Lifull FaM代表取締役の秋庭麻衣氏は一児の母であるワーキングマザー
新卒の一期生としてまだ30人ぐらい(現在は海外展開も含め従業員は約600名)のネクストに入社したのですが、「経営者の近くでバリバリ働きたい」と当時は純粋に思っていたんです。ところが想定外のこととして、2年目にこどもを授かりそれが転機となりました。ベンチャー企業ですし20代は仕事中心になるだろうと想像していたので正直、とまどったのは事実。ただ冷静に考えてみると、世間一般的には晩婚化が進んでいる中で若いうちにこどもを産んでその後のキャリアを築くこと自体は、他人には意外とできないことなんじゃないか。むしろ自分にとってプラスになる、この経験を活かせるようなキャリアを意識をすればいいんじゃないかと、発想を逆転させたんです。
社内第一号となる産休・育休を取得したのですが、育児をしながら働くうえで当時の会社にはそのサポート体制がじゅうぶんではないことを痛感し、やがてその思いは違和感となっていきました。子育てをすることは次世代を創る素晴らしいことですし、一方、女性が働くことももちろん社会にとって大切なこと。その二つのプラス要素を生み出そうとする女性がマイナスの状況に追い込まれている。やっぱりこれっておかしいんじゃないか。自分の周りにもうまく両立ができずに仕事を辞めてしまう人、逆に、忙しくてなかなかこどもを産めない人がいましたし、その思いがますます強まりました。そこで、まずは社内から変えていこう、行くべきだと考えるようになるのです。
今思えば現在につながる意識、つまり子育てをしながら仕事をする女性をサポートしたいという思いがその時、芽生えたわけです。入社以来ずっと営業畑を歩んできましたが、育休明けの復職の際に人事部に移りたいと希望を表明しました。社長にも自分の思いを伝えていましたので、まずは子育て支援制度を整えるために社内のワーキンググループを作ることに着手。時短勤務を小学校卒業まで可能としたり、傷病時の看護休暇を小学校入学まで年に15日の取得が可能としたり、親が職場で仕事をしている様子を目の当たりできるこども参観日を制定したりなどなど。
制度を充実させたことより、むしろそのような風土が社内にできたことのほうが大事で、こうしたことの積み重ねによりネクストの男性による育児休暇取得率は13%と、世間の2.63%に比べ高い水準を達成するにまで至りました。しかも、役職者が積極的に取得しているのも特徴です。制度があっても、それを利用できる雰囲気、ムードがなければ意味がありません。一連の制度を整えていく過程で、社内のさまざまな人を巻き込んでそれを実現できたことは大きいと思います。
こうしたアクションがLifull FaMというアプリ開発につながっていくわけですが、そもそもネクストという会社が社会的な意義を見いだせることに前向きであることが背景にあります。そこで、企画段階からこの事業がいかに、両立支援を促し社会にとって有益となるか、など大きなビジョンを語り理解を得られるように務めましたね。
もちろん娘が急に病気になることもあれば、家事と育児のために早く帰らなければならないこともありました。日々の業務では“できることは何でもやります!”と公言し、家に仕事を持ち帰ることもしばしばでした。他人より早く帰社しても、夜中に業務メールが来ていれば、上司はきちんと認めてくれるもの。女性はいずれ自分事になる可能性もあるテーマですから共感の輪が広がりやすいので、どちらからと言えば社内の男性から理解を得るように行動しました。
そうして社内の諸制度を整備しながらも、いつか会社の外の方に価値を届けたいという思いが常にくすぶり続けました。実を言いますと、プロジェクトを立ち上げる直接のきっかけはわたくしが離婚を経験したことにあるのです。子育てと仕事に板挟みになり気持ちの余裕が消え、相手に対する気遣いができなくなり、すれ違いが生まれました。
保育園や学校、ママ友、地域のつながり、連携は大事ですし、そうしたサービスはいろいろありますが、いちばん大事なのに足りていないのは家族、特に夫婦間のコミュニケーションではないか、離婚に至った原因も自分なりに振り返る中でそのように考えるようになりました。サービス名のFaMにファーザーアンドマザーそしてファミリーのファムの意を込めたのもそこからの自然な流れです。
アクティブ率が70%、写真の投稿数はロンチ後2カ月で約20,000とリピーターにはすこぶる好評のご様子。参考までにアクティブ率ではラインが驚異の8~9割、フェイスブックで5~6割と言われていますので、なかなかの健闘ぶりと言えそうです。
巷にはこのような“連絡帳”のようなアプリがありそうでないんです。日々のあわただしい生活のなか、共通の子育てのトピックをシェアするのは大切なこと。特に注力したのはスケジュール機能で、お互いの用事を“ネタ”にコミュニケーションをとってもらう作り込み。こどものお迎えで「言った」「言ってない」というトラブルももちろん未然に回避できます。グーグルカレンダーを共有して使い込んでいる夫婦ではなく、紙のカレンダーに手書きという方は結構、多いんですよね。そういう方が使いやすい、とにかく簡単なインターフェースにしてあります。
「いいね」の代わりに「ありがとう」ボタンがあるのが象徴的ですが、働きながら子育てをする上で相手に対する感謝はコミュニケーションのベースとなる気持ち。ささいなことですが、これ一つでうれしい気分になれますし、メッセージのやりとりが円滑になるもの。
アップデートはほぼ毎週。というのも、ユーザーのみなさんからかなりの頻度でご要望をお寄せいただいているんです、びっくりするほど。自分のデバイスへの写真の取り込み、フェイスブックへのシェア機能、パートナーがダウンロードした際のマッチング精度向上など、5月には大きな改修を控えているほか、その後はアプリの紹介ページになっている公式サイトを情報ポータルサイトとしてリニューアルを予定。全体として、家族が幸せになれるようなビジョンを常に描いています。
夫婦の子育ての分担というものは、必ずしも50%ずつという単純なものとは限りません。ベストな割合はそれぞれの夫婦によって異なるものですから、自分たちの目安をつかむためにこのアプリがきっかけになることを願っています。
当初は「未就学児」を想定して開発を進めていたところ、意外にも小学生や中学生のこどもがいる親のほうがスケジュール機能は便利だという反響があるのだそう。塾に習い事に学校にと、しかも兄弟や姉妹がいると、スケジュールの管理が複雑になるため、上手に使えば長いお付き合いが期待できそうなこのアプリ、今後の展開にぜひ注目いたしましょう。