赤ちゃんと一緒に会社へ!最新事情

こどもを授かった親が、育児と仕事との両立に悩まされる根本的な理由。

それは、「放っておけない」新しい家族、絶対的にケアが必要なメンバーが増えるからにほかなりません。勝手にごはんを食べたり、保育園や学校に行ったり、日中のほとんどの時間を、安全に快適にその子が過ごしてくれたなら、心置きなく仕事を今までと変わらないペースでできるに違いありません。

当たり前ですが、とても重要なポイントです。赤ちゃんやこどもには、常に寄り添い成長を見守るおとなが必要。ある時は専従する者が、ある時は代わる代わる家族や他人がそばにいなくてはなりません。

保育園や学童保育、親世代の援助を受けるのはもちろん有力な手段ですが、今回はあえて「我が子と職場へ」の最新事情を見てみたいと思います。

 

子連れ出勤のパイオニア

先頃、アートディレクターの森本千絵氏が新たなロゴを手がけたことでも話題のモーハウス

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「授乳服メーカー」と聞けば、あながち違和感がありませんが、それでもやはり「赤ちゃんと一緒に社員が通勤する」ことを創業時の1997年に決断されたことはここ日本では画期的です。

当時、3歳の長女と生後一か月の次女を連れて、創業者である光畑由佳さんが自宅から東京の友人宅へと向かう電車内でのこと。万やむを得ず、おっぱいをちゃんと隠すものがないまま赤ちゃんの授乳を決行。その時、彼女の心の中でいちばん強く沸き起こった感情は周囲からの好奇のまなざしにより生じた羞恥心よりも、「これでは産後のお母さんは外に出られないじゃないか」という義憤に近いものでした。

以来、茨城県つくば市本社で「赤ちゃんと会社で過ごす」就業スタイルを導入、2005年には青山にオープンした直営店でも赤ちゃんとともに店頭に立つ販売員の姿がありました。現在、同社では定期的に子連れワークスタイルを目の当たりにできる見学会を実施。次回は11月16日(日)を予定。

代表の光畑さんは自著『働くママが世界を救う!』でこう語っています

会社を経営する私にとって、このところ「一番大切だな」と思っているのは、視野を広く持つこと。異業種交流会などに出席される方は多いと思いますが、彼らはそうした場で新しい人脈を求めると同時に、新しい情報や価値観も求めているのだと思います。

一方で、子育て中の人間関係というのも、なかなか面白いものです。職業、趣味、年齢もさまざまで、子育てという接点がなければ、まず出会わなかっただろう人たちと交流する機会が増えます。

ダイバーシティ経営というキーワードが頻繁に聞かれるようになる前より、多彩な人材、多様な価値観で企業の質が変わることを指摘しています。こうした取り組みにはコストはもちろん、労務管理や子育て社員以外のメンバーとの連携などさまざまなハードルがあるのは確かですが、それを上回るメリットとして、優秀な人材獲得チャンスがあることを同社は証明しています。

全国に広がる? 期待されるコンビニと子育ての接近

続いて、コンビニエンスストア業界では初、事業所内保育施設「ハッピーローソン保育園」を今夏、本社のある品川にオープンさせたのがローソン。

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絵本作家、グラフィックデザイナーのディック・ブルーナさんによる赤ちゃんマークがお出迎え。そもそも、この保育園は2007年7月にオープンしたハッピーローソンの流れを汲むもの。2005年に「未来のコンビニを考えよう」論文・アイデアコンテストにルーツがあります。同社に在籍しているママ社員の発案により、子育て中の母親たちがコミュニケーションの場としてコンビニを活用するプランが最優秀賞に選ばれたことにまでさかのぼることができます。

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共同事業主を含めた20代~30代のグループ各社の女性社員4名が現在、利用中。その全員が0歳児のママで、認可保育園で預かってもらえず、待機児童扱いとなり途方に暮れていたところ、この事業所内保育施設がきっかけで復職ができたとのこと。

JR東日本、JR東海、京浜急行が乗り入れ、多くのビジネスパーソンが行き交う駅となれば、通勤時の不安や危険はないのでしょうか?

利用者は、全員、公共交通機関(電車)を利用しており ラッシュ時間を避けて勤務時間を組んで勤務しています。 ローソンでは育児時短制度(1日あたり3時間までの時短が可能)があり、 またクルー(パート)はシフト制ですので、このような制度を利用して勤務 時間を調整することが可能です。(同社広報部)

さらに、この保育園では通勤のストレス緩和策として利用者の手荷物を削減するサービスを打ち出しているのもポイント。それは

① ランドリーサービス(着替えの洗濯・乾燥を保育園で実施し、毎日の着替えの持ち帰りはなくす) ② 紙おむつ使い放題(保育園側で紙おむつが用意されるため、毎日持参する必要なし) ③ お昼寝布団カバーの洗濯、持ち帰りをなくす(「コット」というメッシュタイプのベッドがあり、お布団カバーの用意は不要)

赤ちゃんや小さなこどもと外出する際、荷物は常に頭を悩ませます。何気ないお出かけでもたくさんの持ち物によって行動(範囲)が否応なく制限されてしまいますし、何よりぐったり疲れてしてしまうもの。通勤時のこのような配慮は魅力的と言えるでしょう。

ローソンでは毎年、管理職向けにダイバーシティ研修を実施、育児休職から復帰した社員の受け入れについてのグループワークもメニューとして取り入れるなど、上司がスムーズに復職者を受け入れられるよう会社をあげてサポートしています。

高さ日本一?の保育園

地上300m、日本一の超高層ビルとして今年、開業したあべのハルカスは入居しているオフィスに勤務しているオフィスワーカー向けに近鉄ほいくえんハルカスを運営。

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上層階の各企業に通勤する際、必ず通過する17階のオフィスロビーフロアにあり、大阪の街並みが眼下に広がるユニークなロケーション。付近に勤める人にとっては職場と近いばかりか、予定外の残業が発生しても急な延長保育に応じてくれる点は頼もしい限り。展望台や百貨店はもちろん、併設された美術館やホテル、天王寺動物園も目の前という、親子でのお出かけスポットに事欠かないので、アクティブな家族にとっては気になる保育園です。また、百貨店では初の試みとなる会員制屋上貸し菜園「まちなか菜園」を、背高のっぽのビルてっぺんに戴き、園児たちが日々、利用することで食育にも力を入れています。

1957年、全国ではじめて百貨店の中にベビー相談室を開設したことでも知られるのが近鉄百貨店。医師や栄養士、保育士といった専門家が、さまざまな相談に無料で応じてきた歴史があり、すでに三世代にわたってこのサービスを利用している方も多く、あべのハルカスにもその歩みが引き継がれています。それがタワー館8階のアサヒベビー保育室で、連日ママヨガにベビーマッサージ、栄養相談、妊娠期からの母乳相談etc. 多彩なプログラムが行われています。

たくさんの先輩ママが安心サポート

育休中の社員が赤ちゃんとともに出社する「子育て面談」の日があるのはドモホルンリンクルでおなじみ再春館製薬所。

産後の女性社員が3カ月に一度、赤ちゃんを連れ立って出社する制度で、産後第一回目は慶弔金が手渡しされる、いわば会社からの公式的な「おめでとう」セレモニーもあり、そこで働く当事者にとっては祝福されている実感がおおいに持てるもの。

育休中の働く女性がブランクを不安に感じる声は昔から根強いもの。特に近年は社会の変化が激しく、仕事の技術も日々、更新されるため、その傾向は顕著になっています。一時的にせよ、社会から疎外されている錯覚、孤立しているかのような感覚を覚えるのは無理もありません。再春館製薬所では、そのような心のケアを子育て面談という施策で行っているのです。

男女比が1:4=51名 : 537名(平成24年3月時点)と女性社員が多く活躍する同社が従業員のために無償の保育所「おひさま保育園」を開所したのは、元号が平成へと変わる前年の1998年のこと。現在でも本社がある再春館ヒルトップの敷地内に「わんぱく保育園」があり、正社員である保育士がサポートにあたっています。

すき間のニーズをとらえた、新たな預かりのスタイル

保育園は基本的に平日に働く世帯に向けた事業者が圧倒的に多く、休日保育を実施している保育園(東京、神奈川、千葉、埼玉の場合)はまだ主流派ではありません。そこで、保育園が利用できない曜日、時間帯を補完すべく、一時預かり専用の企業内託児ルームを運営しているのがネスレ日本。「ネスレキッズルーム」は1時間324円で利用できるスペース、サービスで、開所していない時間帯は産後の社員が集う場所として機能しています。「あずける」「つながる」「ゆずる」「ひきつぐ」。特徴として掲げる4つの視点はいずれも、コミュニティを強く意識したものであり、関係者の間で無理なく運営することを示唆するもの。

同社ではこれに先立ち、2012年4月に「女性の感性・能力をさらに製品へ生かし、男性に育児参加を促す」目的で茨城県稲敷市の霞ヶ浦工場内にも保育施設ねすれっこ・はうすをオープン。2009からはダイバーシティ経営を加速させ、その重点分野として「女性とリーダーシップ」を掲げ、2020年までに全正社員の女性比率を2009年の13%から倍の26%まで引き上げることも決定しています。

この託児ルームを支えているのは病児保育や家事代行なども手掛ける マザーネット。同社がオフィスにベビーシッターを派遣するのはネスレ日本が初の事例。

保育施設を有する企業への助成金は規模により数百万円~数千万円が国から支給されるものの、採算性から二の足を踏む企業が多いのが実情。ネスレ日本のケースは常設に比べると人件費などのコストが抑えられる点で注目すべきケースであり、今後このような形態の福利厚生はニーズが高まることが予想されます。

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