そう、高らかに本の帯で謳いあげるのは話題の新刊『会社の未来は女性が拓く』です。
キャリアコンサルタントとして15年におよび企業研修を重ねてきた植田寿乃氏が近年、特に要請が多いという女性活躍推進やダイバーシティ経営などのテーマに絞り語ったのが本書。
力強いタイトルににじむ確信。その背景として形式的に女性をそれなりのポストに据えただけ、掛け声ばかりが目立つ現実を目の当たりにした焦燥感があります。秘書室、お客様相談室、営業サポート、広報など従来から女性が多い部署ではなく、経営企画室や営業、人事部門に女性管理職がいない会社を“「男子校状態」に単に「女子クラス」を設けただけ”と問答無用に斬り捨てる。
日々、多くの経営者や人事担当者、女性社員を束ねる男性社員と接する中で浮かび上がってきた、変革のための手がかりの数々を凝縮。特に産後の女性をいかに処遇するかが、発展の鍵を握っていることについては多くの紙幅を割いて解説しています。
すでに女性管理職を積極的に登用、育成している会社が相当数あるなか、組織として「進化の度合い」を測るバロメーターこそが、こどものいる女性であると指摘。企業風土や実態という観点から、女性管理職がまったくいない組織を第一段階とし、五段階に分類したうえで、時短勤務のまま管理職に昇格する女性がいる組織がもっとも進化したケースであると分析しています。それはまさに、滅私奉公的な長時間労働を評価する風土から脱却し「仕事の質」を重んじる組織へと完璧に変貌した、時代のリーディングカンパニーであると称賛しているのです。
植田氏が主宰する「女性と組織の活性化研究会」に参加した人から、“いちばん嬉しかったニュース”と植田氏自ら振り返る報告が寄せられました。
彼女は上司の、
「君を課長に推薦しようと思う。時短を取っていることがマイナスポイントになるかもしれないけれど、このタイミングで時短をやめるかい?」
という問いに対して、
「時短を取って働いている今の私に対して、課長に相応しいと思っていただいているのであれば、私は下の子が小学校に入るまでは時短を続けたいと思います。もし時短がネックで管理職になれなければ、それでも構いません」
晴れてその女性は課長職に。そして、二番目に嬉しかった報告もやはりワーキングマザーからだったと述懐。ある企業で生え抜きの女性役員誕生となったニュースでした。
企業とのセッションについて語られた多くのエピソード。中でも、いかにも昭和的な価値観を引きずっている会社の典型的なオールドキャリア男性、彼を取り巻く「物言わぬ人」「事なかれ主義な人」と植田氏の間で繰り広げられるバトルはすがすがしささえ感じられます。
1986年、男女雇用機会均等法の施行以降、男性並みに働く総合職が話題になった時代。そこには「仕事か結婚か」というやるせない二者択一が横たわっていました。寿退職し専業主婦へと方向転換、やがてキャリアは閉ざされる。キャリアは開花するが独身のまま、女性としてのライフイベントを逸してしまう。そのどちらも彼女たちが心から望んだものではないことを植田氏は痛切に代弁しています。
本書はそうした閉塞感と闘い抜き、女性の地位を獲得してきた先行世代を代表して植田氏が、しなやかに活躍する現代の女性に贈るワーキングマザー応援賛歌なのです。