世帯年収が数億から数千万というセレブママの中に、年収250万円のシングルマザーが紛れ込んでしまった究極の格差社会。いわゆる富裕層向けの幼稚園でめぐり合った女性たちの間で繰り広げられるストーリー。その名も『マザー・ゲーム~彼女たちの階段~』というドラマが始まります。
なんとも浮世離れしていると思いきや、実話をベースにした演出が随所に盛り込まれているというから驚きです。放送第一回目でお受験に失敗したママがエルメスのケリーバッグでほかのママと殴り合うシーンも、都内某幼稚園で起こったトラブルを再現したものなのだそう。
もともと女性の価値観の違いや格差に興味があって、待機児童問題やシングルマザーが増えている現状にも関心がありました。それらをひとつの世界に描こうと思ったんです。企画にあたりセレブママやお受験塾などを取材しましたが、驚くことばかりでした。例えば、ママが子どもを幼稚園に送るときは基本的に外車。ピンヒールを履いてヘアメイクも完璧で、読者モデルのよう。駐車場のない園は子どもを正門前で降ろすので「ドライブスルー」と呼ばれているそうです。必ずボスママが存在し、両脇にはヨイショするママが控えている。園ごとの暗黙のルールは数多くあります。(新井順子プロデューサー)
名門にわが子を通わせる教育熱心な母親。リアリティを出すため大量に投入されたBMW、本邦初タイアップとなった高級ジュエラー、ショーメのきらびやかなアクセサリーetc. 一見、華やかさに包まれ、物心ともに満たされた女性たちと思いきや、実は仮面をかぶって母親という役割をまっとうするためにもがき苦しむ姿がそこにあります。みな子育てをする母親でありながら、立場の異なる女性同士がぶつかり合い、いつしか友情を深めていく。かつてない新しいドラマのジャンルが誕生した背景には、女性の活躍が求められている世情も関係していそうです。
今回、連ドラ初主演の座を射止めた木村文乃さんは「周囲の方は『恋愛ものとかすっとばしてシングルマザーなんだ』と面白がってくれましたね(笑)」と自身は未婚ながら、日々、奮闘する母親という役どころに気負うことなくチャレンジ。電動アシスト“なし”のママチャリで疾走するヒロイン蒲原希子を熱演。「設定だけをみると、ドロドロしたドラマを連想されるかもしれませんが、コミカルな要素もあり、見た後に必ずさわやかな気持ちになれる。女性が『あした、ちょっとがんばれるかもしれない』と気持ちよくなってもらえるドラマになっていると思います」とコメント。
シングルマザーのヒロイン蒲原希子役(年収250万円)木村文乃
ひょんなことから入園となった希子の幼なじみで、偶然の再会を果たす神谷由紀には貫地谷しほりさんがキャスティング。夫が公務員、一人娘を園に預けセレブ顔をしつつも、実際には生活が苦しくギャンブル依存の傾向さえあるのが彼女。
主人公希子の幼なじみ、神谷由紀役(年収750万円)貫地谷しほり
元キャリアウーマンで広告代理店勤務の夫の妻を、実生活でも一児の母である安達祐実さんが担当。娘が通うスポーツ教室のコーチ磯山琢己(上地雄輔)との“お教室不倫”という影の一面を持つ女性を演じています。
元キャリアウーマン後藤みどり役(年収1800万円)安達祐実
一方、医師である夫の母、姑との関係に葛藤を抱いている女性を同じく実生活でも二児の母、長谷川京子さんが好演。姑のモラハラ地獄に悩み、そのストレスのはけ口として希子への嫌がらせを企てています。
開業医の妻矢野聡子役(年収3000万円)長谷川京子
そして園ママの頂点に堂々、君臨する小田寺毬絵を演じるのが檀れいさん。某ビールメーカーの庶民派なイメージとは一転、ママカースト最上位に鎮座するレディーになりきっていて、取材当日の豪華な衣装に「ウエディングドレスのようですが…」と司会者が投げかけると「普段着です」と役さながらに余裕を感じさせる回答を。
レストラン事業を営む経営者の妻、小田寺毬絵役(年収5億3千万円)檀れい
あからさまな経済格差があり(特に希子にとって)同じ集団に留まっているのはおよそ不自然、不可能とも思える面々が、 どのようにして心を通わせていくか。それがこのドラマでいちばんの見どころです。
産後の女性が働くという視点では、希子が直面する女性起業にも昨今、脚光が集まっています。デリキッチンの「ごはんや」というお弁当屋さんをオープンさせる日が刻々と近づく中、一向に預け先の保育園が決まらない。区役所の待機児童の担当職員に談判するも、取り合ってもらえず…途方に暮れていた時にたまたま出会ったのが、このセレブ幼稚園の園長。物語はここから始まります。
記者会見では「女の幸せとは?」の質問に対して、女優陣がそれぞれの持論を展開。
「気持ちが波立たないように。かわいらしくいられること」(貫地谷しほり) 「“ないものねだり”をしてしまうと、誰も幸せにならない。自分がいちばん居心地のよいところに身を置く。どんな状態でも、“自分は幸せなんだ”と思う心の在り方。人に必要とされるということ」(長谷川京子さん) 「劇中から学んだことですが、ささいな幸せに気付けること」(木村文乃さん) 「自分の家族、周りの家族が笑顔でいること」(檀れいさん) 「帰る場所がある、自分の居場所があるんだなと実感すること。自分の娘にもそういう場所を作ってあげること」(安達祐実さん)
それはさておき、一般試写を兼ねた今回の記者発表でいちばん盛り上がったのは何を隠そう、司会進行を務めた山之内あゆTBSアナウンサーが「わたくしも3人のこどもがいるんですけど…」と、こともなげに自身のワーキングマザーぶりを発言して会場を沸かせた時なのでした。演者のみなさんは淡々と質疑に応えていたのに、その瞬間一斉に大きなリアクションで驚いていたのが印象的。